藤巻健史(ふじまき・たけし)/1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを務めた。2013年7月の参院選で初当選。主な著書に「吹けば飛ぶよな日本経済」(朝日新聞出版)、新著「日銀破綻」(幻冬舎)も発売中藤巻健史(ふじまき・たけし)/1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを務めた。2013年7月の参院選で初当選。主な著書に「吹けば飛ぶよな日本経済」(朝日新聞出版)、新著「日銀破綻」(幻冬舎)も発売中
藤巻氏が消費増税についての問題点を指摘(※写真はイメージ)藤巻氏が消費増税についての問題点を指摘(※写真はイメージ)
 “伝説のディーラー”と呼ばれた藤巻健史氏は、消費増税についての国の対応がおかしいと、問題点を指摘する。

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 先の衆議院選の際、テレビ朝日の選挙特番に出演させて頂いた。当初なかなか討論に加われなかったが、番組が進み、経済が話題になって火がついた。

 党内議論がまだ終わっていないことまで持論を展開してしまった(個人的見解だと前置きしています)。すると、普段あまり人をほめない(?)田原総一朗さんが、えらくほめてくれた(笑)。「フジマキさんの意見は貴重だから、それをぜひ維新の政策にしなさいよ。『小さな政府、完全な自由競争』。そういう主張をする人、他にいないもん。存在感が出るよ」(注・私の考える完全な自由競争はセーフティーネット確立が大前提です。あしからず)

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 国の最大の仕事は国民の生命と財産を守ること。防衛、外交とともに財政こそが国政の最重点項目のはずだが、衆院選ではほとんど議論されなかった。

 ほんの少しだけ議論したのは、消費税を予定どおり上げるか凍結するか。しかし、「増税ありき」で考えてはいけないと思う。

 江戸時代、年貢の取り立てが厳しくなると農民一揆が起きたという。例えば、四公六民だったものを五公五民にすれば、農民の怒りが爆発した。現代でも同じだろう。経済成長の果実を国民と国がそれまでどおりに分配すればよいが、国が多く分捕れば、国民は怒る。

 経済規模が1.5倍になったとき、国の取り分の税収と国民の取り分ともいえる給料などがともに1.5倍に増えれば、国民は税負担が増えても不満を持たないだろう。収入もそれ相応に増えているからだ。

 日本はこの30年間で経済規模(=名目GDP)が1.5倍になった。税率を変えず、かつ累進性を調整していけば、税収も1.5倍になったはずだ。それに対し、歳出は2倍に膨らんでいる。だからこそ、1080兆円もの借金がたまった。 

 
 この差を増税で埋めようというのが消費増税。成長の果実を国民より国が多く分捕ろうという発想だ。このように、経済成長の果実を国民より国が多く分捕る案のほか、1.5倍の税収増なら歳出も同程度に抑える歳出削減案もある。逆に経済成長を支出と同じ2倍に高める方法、またはそれらの組み合わせもありうる。

 私は経済規模を2倍にして税収を2倍にするのがベストだったと思っている。それは難しいことではなかったはずだ。このコラムで何度も書いたように、30年間で1.5倍の経済成長は、先進国中でとんでもなく低い。中国の75倍はともかく、経済規模の大きかった米国でも4.1倍だ。

 財政政策(世界最悪の財政状態)と金融政策(中央銀行が世界で一番メタボ)を極限まで発動したのに、日本経済はこのざまだ。根本的な原因は、日本が典型的な社会主義国家だったからだと思っている。それゆえに市場原理が働かず、円高になってしまった。

「資本主義は終わった」と言う人がいるが、そうではない。「日本は社会主義的国家運営」をしているから、低迷した。世界から「日本病」と揶揄されるほどだ。

 財政危機を政治が解決しなければ、マーケットがいずれ過激に解決する。そのとき、政治家は自分の無責任ぶりを棚に上げ、「市場の暴力」とマーケットを非難するのだろう。

週刊朝日 2018年1月5-12日合併号より抜粋