安藤忠雄(あんどう・ただお)/1941年、大阪府生まれ。79年《住吉の長屋》で日本建築学会賞。代表作に《光の教会》《FABRICA(ベネトンアートスクール)》《フォートワース現代美術館》《地中美術館》など。プリツカー賞、UIA(国際建築家連合)ゴールドメダル、フランス芸術文化勲章など受賞多数。イエール大学などで客員教授を務め、97年から東京大学教授、現在は名誉教授。12月18日まで東京・国立新美術館で「安藤忠雄展-挑戦-」が開催中。(撮影/写真部・小原雄輝)
安藤忠雄(あんどう・ただお)/1941年、大阪府生まれ。79年《住吉の長屋》で日本建築学会賞。代表作に《光の教会》《FABRICA(ベネトンアートスクール)》《フォートワース現代美術館》《地中美術館》など。プリツカー賞、UIA(国際建築家連合)ゴールドメダル、フランス芸術文化勲章など受賞多数。イエール大学などで客員教授を務め、97年から東京大学教授、現在は名誉教授。12月18日まで東京・国立新美術館で「安藤忠雄展-挑戦-」が開催中。(撮影/写真部・小原雄輝)
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 作家・林真理子さんとの対談に世界的建築家・安藤忠雄さんがご登場。現在、東京・国立新美術館で開催中の「安藤忠雄展―挑戦―」は、「光の教会」の原寸大での再現などが展示され、連日大盛況。挑戦を続ける安藤さんに建築界の今について聞きました。

*  *  *

林:びっくりしたんですけど、先生は個人住宅の建築もやってらっしゃるんですね。

安藤:年に2軒ぐらいやってます。

林:それは知り合いですか。

安藤:いやいや。大阪の人が直接電話をかけてきて、「家を建てたいんですが」と。「お金はあるんですか」と聞いたら、「お金はありません。安藤さんの工夫でできませんか?」というのがよう来るねん(笑)。

林:それ、ちょっとずうずうしいじゃないですか。

安藤:大阪の人はずうずうしい。でも、「住吉の長屋」のようなああいう小さい家、けっこうやってますよ。たとえば、4メートル四方の家があります。その家は4階が居間で、トイレは1階なんです。子どもが1階から4階までいつも上がったり下がったりしとる。施主は「うちの子どもは強くなるでしょうな」言うてケロッとしとる。そうやって明るくいかなあかんとちゃうかなと思ってますね。

林:「住吉の長屋」は今も施主の方が住んでらっしゃるそうですけど、ご自分の建築が大切にされているというのは、建築家としてうれしいでしょうね。

安藤:そりゃうれしいですよ。住みやすいかどうかよりも、人にとっての家とは、自分たちの魂がいるところ。そういうところを持ってなきゃいかんと思うんです。私の場合は、自分の魂の住みかは事務所だと思ってるんです。1階から5階まで吹き抜けで、今回の展覧会も、入り口のところに自分たちの事務所を再現してるんです。

林:はい、ありました。でも、エレベーターがないから、若い人はいいですけど、年とった方は大変そうですね。

安藤:地上5階、地下2階あるんですよ。エレベーターないから、ガーッと階段を上っていくでしょう。アスレチック行かなくてもいい(笑)。もう一つ、後ろにはしごがあるんです。シュッと下りてくると速いですよ。消防署みたいなもんで(笑)。

林:先生は、「建築も手を入れていかなければいけない」とおっしゃってますけど、それにはまたお金と年月と熱意が必要ですよね。

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