鈴木おさむ/放送作家。1972年生まれ。高校時代に放送作家を志し、19歳で放送作家デビュー。多数の人気バラエティーの構成を手掛けるほか、映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍
鈴木おさむ/放送作家。1972年生まれ。高校時代に放送作家を志し、19歳で放送作家デビュー。多数の人気バラエティーの構成を手掛けるほか、映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍
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2010年の優勝コンビ、笑い飯。毎年、新しいスターが出るM-1グランプリ。(写真は2010年)(c)朝日新聞社
2010年の優勝コンビ、笑い飯。毎年、新しいスターが出るM-1グランプリ。(写真は2010年)(c)朝日新聞社

 放送作家・鈴木おさむ氏の『週刊朝日』連載、『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は「M-1グランプリ」について。

【M-1グランプリ2010王者といえば…】

*  *  *

 世の中には芸能界に入るためのオーディションはたくさんある。だが、そのオーディションで受かったり、優勝しても、即座にブレークすることはない。今のテレビで一夜にして、人の人生を大きく変えるのは、M‐1ぐらいだろう。

 M‐1グランプリ2017で、とろサーモンが優勝した。結成15年。ラストイヤーとなる出場での優勝。決勝に残ったのはミキに和牛。このキラキラして勢いに乗ってる2組と、泥水をすすりまくったとろサーモン。

 僕がお酒を飲みに行く芸人さんの中には、40歳過ぎて売れてない芸人さんは結構いる。みんなおもしろいが売れてない。

 M‐1はコンビを組んでから15年以内のコンビに出場権があるが、芸歴15年未満の芸人さんはM‐1という目標がある。だが、僕の周りにいる芸人さんはそこに出るという目標を持てないのだ。

 数年前、M‐1に出たあるコンビがいた。漫才の腕を磨き続けて、いつか絶対M‐1の決勝に出て売れてやると意気込んだ。気合を入れて臨んだ準決勝。そこで勝ち抜けば、テレビ放送のある決勝に出られる。だが、そのコンビのボケが一瞬だけ噛んでしまった。M‐1の会場にはスポーツ観戦的な緊張感もある。一瞬の噛みで、お客も「噛んだ」って思ってしまう。

 そのたった一瞬の噛みでペースを壊した彼らは、その年、決勝には出られなかった。その翌年、彼らは見事、決勝に出た。だが、決勝に出た中で、最下位という結果だった。M‐1の決勝に出たことで、漫才の営業は増えただろう。

 だけど、テレビの仕事が増えることはなかった。そして、芸歴も20年に近づき、彼らは日々漫才のネタを作り続け、腕を磨いている。

 もうM‐1に出られない。そんな彼らが、今後、どうやってブレークのきっかけをつかんでいくのかはわからないが。「いいネタを作れば裏切らない」と信じ、作っている。

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