野村総合研究所の推計では、2013年に13.5%だった総住宅数に占める空き家率は、23年には21.1%、33年には30.4%まで上昇する。3軒に1軒が空き家になる計算だ。不動産は安定した資産ではなく、負の遺産になりかねない。土地問題に詳しい閣僚経験者もこう指摘する。
「土地神話は完全に崩壊した。30年ごろになると地価はさらに下がる。駅から離れたところでは、土地を売っても建物の撤去費用さえまかなえないケースが出てくる」
それでも日本人の持ち家信仰は今も根強い。15年の国勢調査によると、全国の持ち家の割合は62.3%。3世帯に2世帯が家を所有している。背景には、賃貸よりも買ったほうがお得だという考え方がある。
今は超低金利で、35年の固定金利でも1.5%以下で借りることができる。新築マンションを買った場合、毎月の返済額が低く抑えられ、借りる場合の家賃と変わらないケースも少なくない。マンション販売会社の担当者は、このようなセールストークをしてくる。
「同じ金額を毎月払うなら、資産が残るほうが有利です。賃貸だと払うだけで何も残りませんよ」
確かに、ローン返済額と長期間賃貸する場合を単純に比較すると、買ったほうが得に思える。しかし、マンションの場合、ローンとは別に管理費や修繕積立金が毎月かかってくる。ほかにも、固定資産税を毎年支払わなければならない。
35年かけてやっとローンを返済しても、建物の価値は下がっている。外壁や配管などの傷みが進んで、修繕積立金だけでは足りないことも考えられる。住宅ジャーナリストの榊淳司さんは警告する。
「建物は水回りなどを定期的にメンテナンスしないといけない。長期間たつと外壁などの修繕も必要になってくる。特にタワーマンションは下から足場が組めず、通常のマンションよりも費用が倍近くかかる。積立金があるから大丈夫とは言い切れません」
意外なところにもリスクが潜む。マイカー離れで、駐車場が「がらがら」のマンションは珍しくない。駐車場代が当初の想定より集まらないと、管理費や修繕積立金の不足につながる。榊さんはマンションの機械式駐車場には、問題点が多いという。