このまま物価高騰が続けば、日本企業や日本経済はどうなってしまうのか。帝国データバンク情報統括部長・上西伴浩さんに聞いた。AERA 2023年2月20日号の記事を紹介する。
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「物価高倒産」が急増しています。ロシアのウクライナ侵攻に端を発した物価高で、原油や燃料、原材料などの仕入れ価格上昇や取引先からの値下げ圧力などで価格転嫁できなかった「値上げ難」などにより、収益が維持できなかった倒産です。
2022年の物価高倒産は計320件で、前年の138件から2.3倍に急増しました。単月では12月が48件で最多。6カ月連続で調査開始以来最多を更新しています。業種別では建設業(70件)、運輸・通信業(64件)、製造業(61件)と続きます。人手の確保が困難な建設業は休廃業も22年は6936件と、21年の6903件よりも増加しています。メーカーなどは比較的価格転嫁しやすい半面、卸・小売りなど消費者に近い業態ほど価格転嫁が難しい状況です。
物価高のピークはこれからです。今年値上げされる予定の食品は1万2054品目(1月末判明分)に上り、4月中には1万品目を超える見通しです。昨年より3カ月早い1万品目突破となり、値上げペースは加速しています。今月には、このうち4割超にあたる5463品目の値上げが控えています。
生産活動が回復し、工場の稼働率が上がるにつれ、燃料費の高騰が企業経営を圧迫しています。エネルギーコストの上昇分の価格転嫁はほとんどの業界で進んでおらず、4月以降も電力会社の電気料金の引き上げ申請が控えています。
今年はコロナ禍で実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」を受け、延命されていた企業の借入金返済が本格的に始まります。返済据え置き期間中に業績回復や経営体質強化が遅れた企業が事業継続を断念するケースが増えると予想されます。ほかにも、今年からコロナ禍の様々な支援や規制が取り払われます。インバウンドで人流も増え、企業の生産活動が本格的に再開すると競争が起きます。駅伝をイメージしていただければよいでしょう。参加者は一斉にスタートしますが、コース途中で徐々に分散し、ゴール近くになると脱落する選手もいます。それと同じで、倒産件数は企業間の競争が激しくなる局面で増えます。今後は賃金上昇圧力もかかります。そう考えると、企業の生産活動や物価高、エネルギーコストも上がる今春以降に倒産件数はさらに上積みされる可能性が高い、と見るべきでしょう。