■勝ち組と負け組
ただ、1990年代に倒産件数が増えたときと今では法制度も変わり、企業の合併や買収、事業の統廃合が進めやすくなっています。中小企業は地元の地方銀行や信用金庫、信用組合の経営統合の行方を注視する必要があります。それによって経営環境の有利不利に地域差も出るからです。物価高の価格転嫁をスムーズに図れるか図れないか、賃上げができるかできないかによって勝ち組と負け組の明暗がはっきりする時代が来年にかけてやってきます。ビジネスは人・モノ・カネ・情報で動きます。とりわけ賃金はキーになると思います。賃上げしないところに人材は集まりません。
一方で、中長期的にポジティブに考えなければいけない面もあると思います。日本経済はこの20~30年、市場の新陳代謝が起こらなかったのが最大の課題です。いわゆる「ゾンビ企業」の退場は新陳代謝のために必要なプロセスという見方もできます。国際決済銀行(BIS)が定義するゾンビ企業を抽出・分析したところ、推定される全国のゾンビ企業数は約18.8万社(22年11月時点)に達しています。今の日本の賃金レベルでは、国内産業はさらに空洞化しかねません。物価上昇とともに賃金も上がり、消費活動が活発化する好循環に日本も乗れるか。今は潮目の時期だと思います。
(構成/編集部・渡辺豪)
※AERA 2023年2月20日号