東京都在住で高校教師の山田潤さん(仮名・34歳男性)は、職場である学校に出勤すると咳が止まらず、咳喘息と診断された。大谷医師は1週間の休職を勧め、一時的に咳は治まったが、出勤して、授業で話すと再発した。急性症状に効くステロイド薬を短期的に飲むなどしてしのいだが、最終的には、話す際に声を張り上げなくてもいいように授業中にマイクを使うようにすると、徐々に治まった。

 咳喘息は、話す職業、とくに教師やコールセンター勤務の人などは再発しやすい。重症な場合、転職を勧めることもあるという。

 長引く咳は、複数の病態を併発している場合もある。

「なんらかの刺激で咳が出やすい状態(咳感受性亢進)になると、胃逆流性食道炎や花粉症でも喉がイガイガするなどの喉頭の違和感が生じて咳き込みます。それぞれ胃酸分泌抑制薬や抗ヒスタミン薬、漢方薬が効果的な場合があります」(檜澤医師)

 夏場に長引く咳では、夏型過敏性肺炎にも注意が必要と大谷医師は言う。

「毎年夏にだけひどく咳が出る場合は、家の水回りのカビが原因かもしれません」

 風呂場の脱衣所など湿度の高い床面に増殖する白いカビ、トリコスポロンが主な原因菌だ。8~9月が咳のピークで10月になると治まってしまう人が多い。それでも、気づかずに毎年症状を繰り返していると、慢性化して咳は軽くなっていくが、炎症を起こした肺は線維化していつしか機能不全を引き起こし、死にも至る恐ろしい病気だ。診察から夏型過敏性肺炎が疑われる患者には、大谷医師自ら患者の自宅を訪問し、カビがないか調査することもある。木造住居だけでなく、マンションでも3階以下は湿度が高いため要注意だ。

 夏型過敏性肺炎かどうかが疑わしい場合、自宅を3日以上離れて咳が改善するかを目安にする。もし咳が出なくなるようなら、夏型過敏性肺炎の可能性がある。

「自宅にカビが見つかった場合、最低でも家のリフォームか転居を勧めます。夏型過敏性肺炎は環境を改善しない限り治りません。心配な方は専門医に相談してください」(大谷医師)

週刊朝日 2017年9月1日号

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