風邪をひいてから咳だけがいつまでも治らない──。そんな長引く咳に悩む人が増えている。近年急増する咳喘息のほか、夏には家のカビを原因とする夏型過敏性肺炎にも注意が必要だ。専門医に咳のタイプ別の治療と対策を聞いた。
冬のインフルエンザの流行期や春先の花粉症の時期のみならず、季節を問わず長引く咳に悩む人は多い。その代表は喘息だが、筑波大学病院呼吸器内科教授の檜澤伸之医師によると「咳喘息」がこの10年ほどで急速に患者を増やしているという。咳喘息は、喘息になる一歩手前の段階で、主にアレルギーが原因で起こる慢性的な咳だ。咳喘息の約3分の1は喘息に移行するという。檜澤医師は、こう解説する。
「喘息には、アレルギー反応による炎症に伴う喘息や、気道が冷気やたばこの煙などの外部の刺激に過敏になって起こるものがあります。咳喘息は、このような喘息の一種です。慢性的な咳が続く一方で、喘息患者に見られるゼーゼー・ヒューヒューといった音(喘鳴=ぜんめい)を認めず、呼吸機能はほぼ正常で呼吸困難感もないのが特徴です。アレルギー体質と関係が深いですが、アレルギー体質のすべての人がなるわけではありません」
咳喘息の咳の特徴は、コンコンと断続的に出る風邪などの咳と違い、出ないときには全く出ないが、夜間や明け方などに咳が出始めると激しく止まらなくなるというものだ。池袋大谷クリニック院長の大谷義夫医師は、こう話す。
「風邪ならたいてい2週間で咳も治まります。2週間を過ぎても治まらない場合や最初の1週間でも数日眠れないほど激しい咳が続くという場合は風邪以外の何らかの病気の可能性があります」
咳を誘発するものとして、冷気やたばこの煙のほか、香水、気圧の変化などもある。気圧が大きく変動する台風の季節(夏~秋)は喘息症状が出やすくなる人も多い。
長引く咳の場合、COPD(慢性閉塞性肺疾患)や百日咳、マイコプラズマが原因であったり、肺がんや結核、間質性肺炎、心不全などの重篤な病気の可能性もある。咳だけがいつまでも治らない場合、専門医を受診するタイミングについて檜澤医師は、咳が続く期間が「3週間を超えたら」と言う。