親の死は考えたくないけれども、誰にでもやってくるもの。帰省時は、親と今後についてじっくり話し合うチャンスだ。体が弱ったときにどこに住むのか、判断能力が低下したときに誰が代理を務めるのかなど、意外と決めるべきことは多い。お金のことは死後までついて回る。後悔が残らぬように、今から準備を進めてみよう。
「今までどんな病気にかかりましたか?」「何をするのが好きですか?」「好き嫌いはありますか?」
神奈川県在住の佐竹美紀さん(仮名・57歳)が、自分の母親について「何も知らない」と痛感したのは、母親が亡くなる4カ月前のことだった。
施設の入所手続きのときに、担当者からあれこれ質問されたが、答えられないことばかり。それもそのはず、佐竹さんは高校卒業と同時に県外へ出て、すでに40年。仕事や子育てに追われて、帰省は盆暮れ正月の年に2回。父親が亡くなってから、母親は東北の実家で一人暮らしだった。
すでに、母親は認知症でコミュニケーションが難しくなっていた。結局、親子で大事なことを話し合えぬまま、天国へ旅立った。
佐竹さんが、後悔の念を深めたのは葬式の席だ。家族葬を選んだことに対し、「かわいそう」と叔母に泣いて訴えられたのだ。
「なんでもっと盛大に見送ってあげないの? 仲良しの○○さんも呼ばないなんて……。お姉ちゃんは賑やかな場所が好きだったのよ」
もっと早く、“そのとき”を意識していれば良かった──。佐竹さんは、涙ぐみながらこう言う。
「この後悔は、死ぬまでついて回ると思います」
こうした事態を避けるには、具体的にどんな準備をすればいいのか。下記の37項目の「準備しておくべきことリスト」を参照いただきたい。「体・心」「病気・介護」「お金」「お墓・お葬式」「相続」の5カテゴリーに分け、各分野の専門家の声や親の死に直面した人の体験談を踏まえ、作成した。
【親と死別する前に準備しておくべきことリスト】
■体・心の準備
1.自分の親は「いつまでも大丈夫」という気持ち(願望)を捨てる
2.一緒に一日過ごしてみる
3.好きな食べ物、嫌いな食べ物を聞いておく
4.親のなれそめや仕事が楽しかったときなど、昔の話を聞く
5.「ありがとう」を具体的に伝える
6.親にしてあげたいことを言葉で伝え、行動で示す
7.どんな終末期を過ごしたいか、どこで最期を迎えたいか聞く
8.エンディングノートを書くのをすすめてみる