ドラマ評論家の成馬零一さんは、「本作自体が昭和のテレビ史の総括。優れたドラマ論になっている」と話す。
「テレビ史を背景にした脚本のおもしろさ、リアリティーがある。事件やキャラクターたちの元ネタ探しができるので、ネットとの相性抜群。『あれは誰のことだ』などとゲームのように広がっています」
実際、ドラマで起こる騒動や事件について倉本は、
「ほとんど実話だと思ってもらっていい。実際にあった何かをヒントにしたり、ベースがあったりするものを書いています」
恨みを晴らしたい相手を呪う儀式「ナスの呪い揚げ」も実話。五月みどり演じる三井路子が菊村に執筆を迫った、「処女を捧げるとき」など「女が一生のうちに経験する三つのターニングポイント」の小説ネタも、実際に五月から倉本が頼まれた実話に基づいているという。八千草薫演じる姫の「ねぇ」は、八千草の口癖から落とし込んだ。
「本人は気づいてないらしいんです。『そんなにねぇって言います?』って言うから、『しょっちゅう言ってますよ』『そうかしら?』なんて。でも、それがへんにかわいくて。突然出てくるから脈絡がないおもしろさがあるんです」(倉本)
話がおもしろくて往年の大スターたちが集結しているのだから、視聴者が興味をかき立てられないはずがない。「浅丘ルリ子の大ファンだった」と言う83歳の男性は、
「スターたちの若いころの写真が出てくると懐かしくて、自分の青春時代も思い出してしまう」
77歳の女性は言う。
「高齢とはいえスターのオーラは失われていない。間を含めた演技に見ほれ、彼らが流す涙に一緒に涙しています」
50代半ばの夫婦は「毎日録画して夕食時に夫婦そろって見ている」と話す。妻は第69話で、投身自殺した小春(冨士眞奈美)からマヤ(加賀まりこ)が最後の手紙を受け取って心情を菊村に吐露するエピソードが心に刺さった、と言う。
「(すっかり落ちぶれ、パートナーに捨てられた)小春がやすらぎの郷から出ていったエピソードもつらかったんですが、だからこそ、マヤの『私、(最後の)手紙を出す相手がいないのよ』の言葉に泣きました。私にもそんな人いるかなあと、ひとりになったときの自分を想像してしまったんです」