そこで別居という冷却期間を設けて、離婚の話し合いをする。だが若いころの離婚と違って、50代、60代の熟年離婚は分ける財産も多くなるので、往々にしてもめがちである。
夫婦で協力して築き上げた財産を分配する「財産分与」は避けては通れない問題だ。婚姻期間中に得た収入、それによって夫婦の合意に基づいて購入した財産は夫婦共有の財産だ。土地、建物などの不動産、車、預貯金、有価証券などで、所有名義が夫婦のどちらかになっていても、それを所有するにはもう一方の協力もあったと考慮され、共有財産とみなされる。離婚届を出したあとでも、財産分与の請求はできるが、2年という請求期限があることを忘れてはいけない。そして離婚後では離婚と引き換えとする条件交渉ができないので、離婚時にしっかり解決しておくことが大切だ。
「最近は、財産分与の話し合いで、専業主婦でも2分の1の割合を請求する方が大半になってきました。夫の退職金に関しても同居期間対応分の2分の1を請求し、調停などでも認められることが多くなっています」(比留田さん)
肝心なのは、“同居中”にすべての財産をリストアップしておくことだ。別居したあとでは相手が正直に財産を申告してくれるかどうかわからない。そうなる前にまず、夫名義の財産はどのくらいあるのか、不動産、預貯金、現金、保険、有価証券、家財道具、車、美術品、宝石などの夫婦の共有財産はどのくらいあるのか把握しておくのだ。
「そして、自分がもらえる年金額も年金事務所で確認しておきましょう」とアドバイスするのは、税理士の中島典子さんだ。
たとえば夫が会社員や公務員で妻が専業主婦の場合、妻名義の年金は国民年金(老齢基礎年金)のみだ。満額で1カ月約6万5千円。これではとてもではないが、生活が成り立たない。しかし07年4月に離婚時の厚生年金(老齢厚生年金)の分割制度が導入された。この年金分割制度には2種類ある。
ひとつは07年4月から実施された「合意分割制度」。これは07年4月1日以降に離婚した夫婦が、結婚していた期間に応じて、その期間の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を話し合いで分割する制度だ。最大で2分の1まで分割できる。
もうひとつは08年4月から導入された「3号分割制度」。