貧血といえば若い女性の話と思い込みがちで、「ふらつくだけ」と軽く捉えている人も多い。しかし、侮ってはいけない。重度になれば輸血が必要になり、がんなど生死にかかわる病気のサインのこともある。本誌記者(男性40代後半)が実体験を交え、貧血に潜む本当の恐ろしさをリポートする。
「4年前、貧血で死にかけたんです。自覚のない、いわば『隠れ貧血』でした」
2013年3月9日午前9時ごろ、都内のマンションロビーで男性会社員(当時44歳)は突然、倒れて、動けなくなった。意識はあって周囲の物音は聞こえるものの、声を出すこともできない。異変に気付いた住民が119番通報。救急車で病院に運ばれた。
搬送先の病院で「脳梗塞や急性心筋梗塞の疑いがある」として、磁気共鳴断層撮影(MRI)や心電図をはじめさまざまな検査が行われたが、「異常は見当たらない」とされ、別の病院へ回された。そこで医師が血液検査のヘモグロビンの値がかなり低いことを問題視し、さらに別の大きな病院に緊急搬送された。
診断の結果は「貧血」。緊急輸血が施されたときは、すでに夕方になっていた。輸血は3時間に及び、男性は入院。4日後には「急性心不全」を発症し、集中治療室(ICU)に移され、いっときは意識不明に陥った。結局、入院は3週間近くに及び、輸血は計約20時間も実施された。
実はこの壮絶な体験をした会社員、記者自身である。当時「体がだるいな」程度の自覚しかなく、まさか貧血で死にかけるとは思いもよらなかった。
当時の担当医には「肝臓疾患によるもの」と説明され、数種類の薬が処方された。飲酒による肝臓への影響などを示すγ-GTPは、基準値(50以下)を大きく超えた1500以上。「アルコールは厳禁」と申し渡された。
貧血とは、血液の中の赤血球やその中にあるヘモグロビンの量が少なくなった状態のこと。そうなると血液は酸素を十分に運べなくなり、脳や臓器など体の各所で「酸欠状態」になるのだ。その結果、だるさや息切れ、頭痛、動悸などの症状を引き起こす。