「保育園の経営は、賃料や冷暖房費など固定費がかさみます。必要コストを削ったり、保護者の送り迎えの荷物を最小限にとうたい、オプションサービスで稼いだりする園が多いのです」
オプションとは、園が有料でタオルや紙おむつなどを用意すること。保護者はかさばる荷物を持ち運びせずに済む。ただ、サービスが過熱すると、職員の疲弊につながる。
認証保育園に子どもが通園中のある母親は、閉園間際に子どもを迎えに行ったときの保育士の姿が忘れられない。山積みのおむつを前に極太ペンを握りしめ、園児の名前を一心不乱におむつに書いていた。保護者が買った紙おむつの管理という新たな仕事が増え、現場の保育士がますます忙しくなっていた。別の母親は「職員室におむつなどのノルマ表があった」と話す。
過酷な環境で職場に定着せず、人が育たない。こうした人材不足は園を経営する側にも悩みのタネだ。
前出の角川さんが嘆く。
「LINEで『今日、辞めていいですか』とメッセージを送ってくる若い保育士もいます。特定の子を溺愛し、『◯◯ちゃんは白いご飯が苦手だから』と偏食すら許す保育士には、注意しながらため息が出ました」
かつて複数の保育所を経営した男性も「苦労して保育士を雇ったのに、一人でも辞められると補助金が削減される。だから、明らかに向かない保育士でも解雇が難しい」と打ち明ける。
※週刊朝日 2017年6月2日号