今まで難なくできていたことができなくなる喪失感も大きく、ますます動くことが億劫になってくる。

「つまり、体だけでなく見た目にも精神的にも悪影響ばかり。だからこそ、日々の筋トレが大切。経験上、トレーニングは気合と根性だけでは続かないので、継続するための仕組み作りが必要です」

 この仕組みを日常生活に取り込んだのが、ながら筋トレだ。いつでもどこでもできる手軽さで、1~2カ月で効果が表れ始めるというのも、ズボラな人にはうれしいポイント。

『ビシッと鍛える“ながら”筋力トレーニング』など多くの著書を出している健康づくり研究家の長野茂さんは、実は日本にフィットネスクラブを普及させた指導者でもある。しかし多くの人が長続きしない現実を目の当たりにし、健康長寿につながる新たなエクササイズ法として、1995年ごろから、ながら筋トレの普及に乗り出した。

 長野さんは、ながら筋トレを持続させるためのコツは、「全てを一気に習慣にしようとしないこと」だと話す。

「生活習慣の中で、自然に取り入れられるものを優先して。慣れてきたら種類を増やして、“気がついたら体を動かす”段階から“どの筋トレをどれぐらいやるか”と目標を設定して体を動かしてみてください。徐々に運動意欲が高まって、体を動かすことが気持ちよくなるはずです」

 意外なポイントだが、「疲れたと感じたときこそ動く」ことも習慣にするための秘訣だという。

「ながら筋トレの基本精神は、“疲れたら動こう”。実は、ストレス=動けという脳のサイン。動くことで多くのストレスホルモンは解消されます。疲労を解消させるには、適度に体を動かすのが一番。滞った疲労物質が取り除かれ、気分転換にもなります」

 何を隠そう、記者(31)も人一倍ズボラで、運動を始めても長続きしたためしがない。思いつきでキツめの運動をまとめてやってみた日には、体が疲労してグダグダモードになり、エネルギー倹約態勢に入ってしまいがちだ。

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