と語るのは、木型を担当する高橋おさむさん(42)だ。顧客の顔の見える仕事をしたいと、縫製担当のひろみさん(40)と2004年に開業した。

 外反母趾や若年性リウマチを抱えていたり、大きすぎる、小さすぎるという理由で既製品が合わず、靴選びをあきらめている人も少なくない。採寸だけなら20分もかからないが、二人は、硬くなった気持ちを解きほぐすのも仕事だと思っている。

「おしゃれを楽しんで。私たちが応援します。そういう気持ちを込めてお話ししています」(ひろみさん)

 採寸後は、木型を補正。そこに紙を貼り付け、服のパターン同様に型紙を作製。革を裁断、ミシンで縫製する。こまかな手作業が多く、受注から完成までひと月から数カ月かかる。

 工房は「家主が取り壊そうとしていた」築40年の木造家屋。年代物の足踏みミシンの横で飼いが寝そべる。カタカタと革を縫いつなぐ音。時間を忘れる空間に身を置くうち、客はいつしか背筋を伸ばし、完成を心待ちにして帰っていく。

週刊朝日  2017年5月5-12日号

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