2019年のNHK大河ドラマのタイトルが「いだてん~東京オリムピック噺~」となり、歌舞伎俳優の中村勘九郎と俳優の阿部サダヲのダブル主演が発表された。脚本は朝ドラ「あまちゃん」の宮藤官九郎。
大河ドラマの舞台としては、戦国時代や幕末が好まれる傾向があるが、「いだてん」は1912年から64年までの、五輪をめぐる近現代を描く。主人公は日本人として五輪に初参加した金栗四三と、64年の東京五輪を招致した田畑政治というなじみのない2人。NHKは“笑いの絶えない”ドラマを目指すという。「異色の大河になる」と話すのは上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)だ。
「近年の大河はネタ不足からの閉塞(へいそく)状態にありました。人気の戦国時代、幕末の人物はやりつくした感があって、目先を変えて新島襄の妻や吉田松陰の妹を題材にするなどしましたが、評判はイマイチだった。クドカン脚本と昭和の五輪という組み合わせは新鮮で、これまでにない軽快な大河が見られるかもしれません」
芸能評論家の三杉武氏はマイナーな主人公にしたことが奏功するのではないかと見る。
「視聴者があまり知らない名前だからこそ、物語の中にフィクションを盛り込みやすい。満を持して起用したクドカンの遊びのある脚本で、若年層の視聴者が増えそうです。NHKに勝算はあるでしょう」
若者にすり寄ると長年の大河ファンが離れるのではと気をもみたくなるが、制作陣にも大きな期待ができると碓井教授は言う。
「制作統括の訓覇圭さんと演出の井上剛さん、そして脚本クドカンという組み合わせは『あまちゃん』チームなんです。訓覇さんと井上さんは『ハゲタカ』でも一緒にやっていて、硬軟自在。ドラマ制作のエースを投入したと言っていいでしょうね」
三杉氏はこんな予想も。
「制作陣の顔ぶれを見れば、サプライズで『あまちゃん』でブレークしたのんさんの出演もあるかもしれません」
朝ドラのような旋風を、大河でも起こせるか。
※週刊朝日 2017年4月21日号