「一期一振」の出所については、朝倉・堺・毛利の3説がある。現在、もっとも有力視されているのが毛利説で、天正18(1590)年に秀吉が毛利邸に臨んだ折に目に留まり、しつこく所望したため、やむなく毛利輝元から秀吉に献上されたというものだ。
その後、秀頼に相続されたが、大坂城落城により一旦は消失。それを惜しんだ家康によって探し出され、再刃(火災で焼けたり研ぎ減って刃がなくなったりしたときに、再度焼き入れをすること)がなされ、尾張徳川家に伝えられた。現在は皇室の御物として毎年10月17日に実施される宮中での神嘗祭に使用されることがあるという。
秀吉、家康、そして天皇家へ。その変遷と現在の扱われ方は、名刀にふさわしいドラマ性を感じさせる。(ライター・植草信和、本誌・鮎川哲也)
※週刊朝日 2017年4月7日号