青柳俊彦JR九州社長とカシオペアのキーボード奏者だった向谷実氏。一見、接点のなさそうな2人だが、鉄道と音楽という“共通言語”があった。両氏の会話が発端で、新幹線シミュレーター、発車ベル、駅のホームドアまでできてしまったのだ。二人の対談をお届けする。
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向谷:最初に青柳さんと会ったのは、2003年。お茶の水の喫茶店でした。
青柳:当時、私はJR九州の運輸部長で、JR東日本の小縣方樹さん(現・取締役副会長)の紹介で「向谷実さんが新幹線の実写版シミュレーター(運転士訓練用の模擬装置)を作りたがっているから協力してあげてほしい」と頼まれた。
向谷:当時、新幹線の実写版のシミュレーターは開発されていなかった。まだ開業していない九州新幹線でやりたかったんですよ。
青柳:僕は大学時代、軽音部でドラムをやっていたので、カシオペアの向谷さんの音楽は聴いていました。ファンでしたから(笑)。でも、もっと興味があったのは向谷さんが1995年に作った運転手の疑似体験ができる鉄道ソフト「Train Simulator中央線201系」。このソフトを持参し、サインをもらいました。
向谷:大変、恐縮です。あのソフトは当時すごくヒットして、生産が間に合わないぐらいでした。青柳さんもユーザーだったということに非常に感動しました。今の30~40代の運転士さんで、これを持っている人、多いよね。
青柳:うちの息子も夢中で幼稚園のころ、一日中、やっていましたよ。
向谷:ソフトのおかげで息子さんもJRに入社し、運転士になりましたよね。
青柳:ええ、お陰様で。
向谷:青柳さんにはそれ以降、いろいろとご協力いただき、九州新幹線の試運転では映像を撮影させていただきました。その後、JR東日本の新幹線シミュレーターも作ることになり、それが海外への新幹線輸出で使われ、安倍晋三首相とご一緒させていただく機会もありました。