夫は、『あらしのよるに』など誰もが知る作品を生み出した著名な絵本作家・きむらゆういち。38歳も年の離れた妻・木村みゆきは夫のよき理解者だ。妻の家族は、最初は驚いたものの全員が結婚に賛同したという。
――「カレンダーから書き出してみたんですけど」。そう言って夫が原稿用紙を取り出し、妻がのぞき込む。そこには二人で行った旅行先がびっしり書かれていた。
夫:最初に旅行したのは、2013年の4月。モルディブだったね。
妻:新婚旅行でしたね。
夫:モルディブになったきっかけは、初めて出会った場所が沖縄で、沖縄から帰った後に、モルディブの海もきれいだよって話をしたからなんです。
――妻が講演会の手伝いをしたことで、二人は知り合う。
夫:11年の7月に、沖縄で講演会をやったんですが、たまたま手伝いが見つからなくてね。
妻:私は前年まで専門学校で小説創作を専攻していたんですが、当時の恩師から声をかけられまして。
夫:その先生は僕の知り合いで、彼が彼女を紹介してくれたんです。
妻:夏で、場所が沖縄だからということで、水着も持って行ったんですよ。
夫:仕事の後に遊ぶ時間がありましたからね。海に行って、楽しい時間を過ごしました。それが大きかったのかな。
妻:有名な作家先生ですから、厳しい人だったらどうしようって緊張していたんです。でも、すごく柔らかくて、いい人だなあって。それに面白い方でした。
夫:僕のほうは、いくらなんでも、まさか将来そうなるなんて思わない。僕の年齢も、お義父さんより上ですし。もちろん、かわいいなと思いましたが、そういうふうに思わないようにしていましたね。
妻:沖縄から戻ってから、私の書いた小説を読んでもらうようになったんです。
夫:それで、月に1回ぐらいは会うようになった。
妻:横浜の中華街とか、よく行きましたね。
夫:その時に、モルディブの話をしました。航空写真やサンゴ礁の写真を見せ、次に行くなら大事な人と行きたいって言う。そうするとイメージが湧くでしょ。