夫はシュールな笑いと独特の世界観で、ギャグ漫画の新境地を切り開いた漫画家のしりあがり寿。妻の西家ヒバリもまた夫の影響でギャグ漫画の道へと進んだ。そんな2人の馴れ初めからユニークなエピソードとは?
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夫:出会いは19歳か20歳のときだよね。
妻:うん、そーだね。
夫:多摩美術大学の本館の2階に自販機があって、僕がいつもカフェオレを飲んでたんです。そこに西家さんが来たんだよな。
――時は1978年。夫は多摩美術大学グラフィックデザイン専攻の2年生。妻は油絵専攻の1年生だった。
妻:大学で回覧されていた冊子に彼が描いた漫画が載っていて、それがおもしろかったんです。「どんな人が描いてるんだろう?」って、漫研の友人に紹介してもらった。
夫:僕の西家さんの第一印象は「ヘンな人だなあ」。
妻:失礼な(笑)。
夫:ちょっと声が太いよね? 女の子っぽくキャーキャー言う感じとは違う。僕はそういうのが苦手だからそれがよかったのかも。
妻:しりさん、雪駄を履いてなかった?
夫:履いてた。あの後、雪駄で電車乗ってたら、いきなり雪駄が分解して藁(わら)になっちゃったんだよね。
妻:あはは。
夫:藁をその場に残し、片足はだしで電車を降りた。
妻:そういうこと、ホント多いよね。日常がギャグ漫画みたい。学生時代は、下り坂になると車のエンジン切ってたね。ガソリンがもったいない、惰性で下れるからって。
夫:お金なかったしね~。
妻:運転してる最中に、いきなり運転席の背もたれが「バターン!」って倒れたこともあった。
夫:イスのボルトが腐ってたんだよね。あお向けにひっくり返った。
妻:「またおかしなことするんじゃないかな」って楽しみで、それで一緒にいるようになった。
夫:あのころ僕のアパートは鍵かけてなかったから、いつの間にか西家さん、居ついてたんだよね。
――出会って数カ月で交際がスタート。漫画好きという共通点も大きかった。