
まだ海外旅行が一般的でない時代から、世界の魅力をお茶の間に届け続けたジャーナリスト・兼高かおるさん。ナレーター、ディレクター兼プロデューサーとしてテレビ番組「兼高かおる世界の旅」(TBS系)などに携わり、地球をおよそ180周、訪問国数は約150。作家の林真理子さんが海外での上手なコミュ二ケーション術を伺いました。
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林:兼高さん以外のスタッフの方は、英語がしゃべれなかったんですよね。
兼高:しゃべれなくたって大丈夫、マナーがあれば。わたくしたちは取材で現地に行ったら、「ここのタブーはなんですか?」と聞きますが、それでもその国の文化や風習にすべてを合わせるのは無理。ただ、日本人として日本のマナーを体現すれば、どこへ行っても恥じることはありません。それだけでとても好感を持ってもらえるのです。
林:わたしも子どものころ番組を見ていましたが、子どもごころに兼高さんの美しい日本語が印象的でした。たとえばアフリカの踊りを紹介されるときには、「これはお祭りのときの儀式の踊りですのよ」という感じに、丁寧におっしゃる。その言葉に尊敬の念がこもっていて、「ああ、これは大切な文化として見なくてはならないのだな」という思いが湧いてきました。
兼高:相手をバカにしたら仕事になりませんから。それからよく観察すること。たとえば今、林さんとお話ししていても、「いいブローチつけてる。趣味がいいな」という具合に、観察してしまうんです。これはクセですね。