燃料・サービスの営業利益の見通しは、東芝が213億円とWHの175億円より多い。1基あたりの利益は東芝10億円に対し、WHは1.9億円。東芝は5倍も利益をあげている。

 なぜ日本の原発事業は米国と比べて、こんなに儲かっているのか。答えは「原子力ムラ」にある。

 総括原価方式という言葉をご記憶と思う。電力会社は「費用+適正利潤」の料金で電気を売る。保守するメーカーに高いカネを払っても、料金で回収できる。

 WHの経営悪化が問題になって以降、東芝は「WHは燃料・サービスが高収益なので、問題ない」と繰り返した。東芝が国内でかかわる原発は、長期停止中の“寝たきり原発”。再稼働のめどがないのに、高収益がうたわれるWHの5倍のカネで“介護”している。

 東芝は原発を「安定収益」だから続けるという。止まっていても、メーカーは破格の収益が保証されるからだろう。一方、消費者は電気代に上乗せされ、税金のごとく取り立てられる。

 東芝だけではない。三菱重工業や日立製作所の原発でも同じこと。原発が動こうと動くまいと、メーカーは儲かる。こんなことは、米国では考えられない。

 WHの買収時、当時の西田社長が「原発は安定事業」と考えたのは、原子力ムラの秩序が頭にこびりついていたからではないか。

 米国では既に、原子力は儲からないビジネス。だから、WHが売りに出た。建設を担う大手ゼネコンも原発部門から撤退を模索し、現場で発生する膨大な損を、いかに相手に押し付けるかで暗闘が始まった。

 日本では、納期やコストを巡って電力会社やゼネコンともめることはない。料金に上乗せして済ます、世界とかけ離れた構造だ。

「国内しか知らない経営者が世界の趨勢を見誤り、原発は海外でも儲かる、と思い込んだ。それが災いの始まり」と後藤さんはいう。

 今なお原発を捨てることができない。「残すのは原発でなく半導体」という正論がかき消され、債務超過解消のために売れるものをすべて売る。そんな会社に、東芝はなった。

 原発事業は売れない。買い手もいない。つかんだババを離せないまま、東芝は“寝たきり原発”に寄生して生きてゆく。

週刊朝日 2017年3月17日号

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