放送作家でコラムニストの山田美保子氏が楽屋の流行(はや)りモノを紹介する。今回は、「ポケット吸入器」について。

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 テレビ局、ラジオ局において、空気の乾燥が大敵な職業と言えば、まずアナウンサーや番組パーソナリティー。続いてゲストコメンテーターなどが続くだろう。

 この時期は風邪をひいている人も多く、生放送中、咳が止まらない人というのがしばしばいるものだ。

 テレビの場合、いくらサブ(副調整室)が張本人のマイク音量をしぼったところで、他の出演者のマイクに拾われてしまい、長いこと「お聞き苦しい」時間が続いてしまう。

 ラジオの場合は、サブ司会者が繋いでくれたり、予定外の曲が延々かかったりするものだが、用意のない場合はもう“放送事故”だ。

 もちろん、咳き込んでいる本人は気が気ではなく、ジェスチャーで水を頼む素振りをしてみたり、目に涙を溜めながら「ごめんなさい」と手を合わせたり……。

 私にも経験がある。必死で堪えて、マイクから遠ざかろうともしていたというのに、「咳き込んでいましたよね?」「大丈夫ですか?」などと御丁寧なフォロワーさんがTwitterに問い合わせをくださる。やっちまった……と後悔することは言うまでもない。

 
 予防にはのど飴? いや、いちばんいいのは吸入器だ。まだ「家電芸人」というワードが耳新しかった時代、

「アメトーーク!」(テレビ朝日系)でキャイ~ンの天野ひろゆきが紹介して、その後、大ヒットしたのがパナソニックの“ポケ吸”こと「ポケット吸入器」だ。

 文字通り、手のひらに収まるサイズで、色はピンク、ホワイト、シルバーの3色。電池式で、スイッチを入れれば40マイクロメートルのミストでいつでものどの奥までしっかり潤してくれる。

 確かに、天野のような芸人らも、テレビのネタ番組はもちろん、長時間、ヒナ壇に座ったり、2時間超えの単独ライブをしたりするときは、のどの潤いがもっとも大事になってくる。

 芸人だけではない。「ミュージックステーション」(同)のような生放送の音楽番組でパフォーマンスをする歌手の場合、全員が楽屋に加湿器を持ち込むため、「“Mステ”の日は廊下が温泉地の湯けむり状態になる」と聞いたことがある。もちろん、それだけでは足らず、スタジオまで“ポケ吸”が持ち込まれる。

 そういえば、某アイドルグループのコンサートDVDを見ていたら、楽屋でスタンバイ中のメンバーが“ポケ吸”でシューシューしているのを見たこともある。潤いミストでのどケア。仕事で長時間、喋らなければならない方にはオススメだ。

週刊朝日 2017年2月24日号