今年の歌会始では、紀子さまが野菜畑で作業にいそしむ人々の姿を、眞子さまは08年に初の単独公務で対面した野間馬(のまうま)を、つまり「公」を詠んでいる。
<霧の立つ野辺山のあさ高原の野菜畑に人ら勤(いそ)しむ>(秋篠宮妃紀子さま)
<野間馬の小さき姿愛らしく蜜柑(みかん)運びし歴史を思ふ>(眞子さま)
天皇が訪れた土地の川や山の名前を詠み込んで和歌を作るのは、その土地の暮らしへの祝福の意味を持つのだという。以前、前御用掛の岡野弘彦さんは記者にこんな話をしてくれた。
「昭和天皇も和歌のお好きな方でした。お出かけ先で、安珍清姫伝説の伝わる日高川(和歌山県)をご覧になると、『日高川という題で和歌を作ってみたらどうだい』と、そばの者におっしゃる。昭和天皇の時代は、そういう雰囲気がありました」
かつては、女官や侍従も参加した月次歌会(つきなみのうたかい)。いまは両陛下以外参加する皇族は少ないが、紀子さまはほぼ毎回提出する。
秋篠宮家と交流のある人物はこう語る。
「紀子さまは鎌倉中期には行われていたとされる皇室の伝統行事『歌会始の儀』や和歌の伝統が絶えないよう次世代に継承すべく、続けておられるのでしょう」
永田さんも雅子さまの和歌に対して、子供の歌が多いという批判があるのは認識している。
「しかし、雅子さまは湧き出るような思いや愛情を素直に詠み、よい歌をお作りになっておられる。むしろ皇族が家族への愛情を詠む姿は、国民への模範ともなり、共感を呼ぶのではないでしょうか」
だが、雅子さまの評判を案じる人も少なくない。ある宮内庁関係者は、皇太子さまに何度かこう話した。
「将来の皇后にふさわしい『公』の和歌をお詠みになるように、と妃殿下へお伝えいただけないか」
※週刊朝日 2017年1月27日号より抜粋