事故から2日後に現場を訪れると、付近の道沿いや空き地には、多数の米軍車両が止まっているのが見えた。浜の入り口に乗り入れた軍用の大型車両の隙間をくぐり抜けて海辺に出ると、米軍が規制線を張り、そのなかで回収した機体の破片を並べていた。

 全身防護服に防毒マスクのようなものを装着した米軍人が機体の切断作業を行う姿もあった。ヘリのプロペラ付近には放射性物質が使われているともいわれ、そのためなのか。

 機体が沈む現場から10メートルほど離れた場所にも米軍の規制線が張られ、中に入れるのは米軍関係者だけ。その外側で沖縄県警が警備を担当する。

 警察官の一人は「米軍の墜落事故で我々の余計な仕事が増えた」と吐き捨てるようにつぶやいた。

 今回の事故を受けて、名護市議会はオスプレイの配備撤回と、米軍普天間飛行場の辺野古への移設中止を米政府に求める決議を賛成多数で可決した。オスプレイは普天間飛行場に24機が配備。東村と国頭村にまたがる米軍の北部訓練場にも、六つのオスプレイのヘリパッド(離着陸帯)工事が進む。米軍は21年までに横田基地にも10機を配備。自衛隊も19年度以降に17機を佐賀空港へ配備する計画だ。

 だが、機体が登場した90年代に事故が多発し、危険な機種というイメージが植え付けられているうえ、今回の事故でさらにマイナスのイメージがついた。

 そのうえ、独特の低周波騒音が健康被害を生じさせる可能性も指摘されている。

 琉球大学の渡嘉敷健准教授(環境建設工学)は米軍ヘリの騒音を心理的、物的影響などに分けたうえで解析。するとオスプレイは他のヘリ(CH46)よりトータルで約2割も騒音が高いことが分かった。

「ヘリモードのときに音と低周波が大きくなる。名護市の小中学生にアンケート調査をしたところ、7割以上がヘリの音が気になり、4割がオスプレイ音を怖がったり気持ち悪がったりしていたことが分かりました。低周波被害の実情を多くの人に認識してもらうことが重要です」

 11月に東村の民家を訪ねるとオスプレイが数分おきに飛行し、騒音は最大で99 デシベルを記録した。100デシベルは電車が通るときのガード下と同じで、聴覚機能に障害をきたすレベルと言われる。

 辺野古と北部訓練場に伊江島補助飛行場を加えると、沖縄北部を覆うように三角地帯ができる。そこで飛行訓練が行われることになれば、住民は墜落事故の危険性や騒音問題と日々向き合いながら暮らさなくてはならない。沖縄国際大学の佐藤学教授(政治学)が言う。

「オスプレイに限らず、米軍機はいまや沖縄を縦横に飛んでいる。先日も宜野座村の集落付近で物資を吊り下げた訓練がありましたが、こうしたやりたい放題が続けば、またいつどこで墜落などが起きるか分かりません。事故を防ぐためには、海兵隊が沖縄から引き揚げるしかないのです」

 国内の米軍施設の74%が集中する沖縄の負担は減るどころか高まるばかり。沖縄以外の人たちの基地問題への無関心も手伝い、県民の怒りは沸点に達している。

週刊朝日 2016年12月30日号

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