そうした大学受験に伴う不公平もあって、中国で一流大学への進学は難しいと判断し、かつ両親に経済力がある場合、いっそのこと中国の大学はやめて海外の一流大学を目指そうという動きが高まっているのだ。

 その第1候補はやはりアメリカだ。米国国際教育研究所(IIE)の調査によると、14~15年度にアメリカ留学した中国人は約30万4千人と、アメリカの留学生全体の約3分の1(2位はインド人、3位は韓国人の順)で、日本への留学生の約3倍だ。中国のGDPが2ケタの伸びを示すようになった00年代以降、上昇し始めた。

 また、英タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)が発表した世界大学ランキング(16~17年)を見ると、1位は英オックスフォード大学、2位は米カリフォルニア工科大学、3位は米スタンフォード大学の順で、やはり欧米の大学が圧倒的に人気。

 アジア勢では24位にシンガポール国立大、29位に北京大が入っており、東大は39位。ランキングを見る限り、日本の東大は世界的に見て上位ではない。それなのになぜ、日本に留学したい、という声が高まっているのか。

 北京大を卒業し、東大大学院博士課程に在籍する朱偉(仮名・26歳)の回答はこうだ。

「北京大が東大よりもランキング上位? そんなの中国人は誰も信じないですよ。そもそもイギリスの会社が発表したランキングで、評価基準は曖昧で欧米有利。教授の英語論文の数では日本が不利なのは当たり前だし、英語で学位が取れるコースも日本はもともと少ない。でも、少なくとも教授の質という点で東大はアジアでナンバーワンだと自分は思います。少なくとも北京大学を卒業し、アジアでの進学を考えるなら、香港大やシンガポール国立大よりも東大に行きたいと望むはずです」

 他の学生からも「香港大、シンガポール国立大は英語メインなのでランキングがアップしやすいだけ」と切り捨てる声が多い。

 自分が日本に留学しているからそう答えるのでは?とも考えられるが、アメリカ在住の中国人からも「アメリカより日本の大学に進学している人のほうが幸せで健康そうに見える」という興味深い意見を聞いた。

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