小池百合子・東京都知事の周辺には、巨額が動く難題が次から次に噴出している。築地市場の豊洲移転計画に東京五輪のボート・カヌー会場の変更案、広尾病院の移転──。ニュースをにぎわす話題にとどまらず、舛添都政時代の「シャンゼリゼ構想」や街路樹伐採の成否まで浮上している。
「東京都がこれでと言ったときに、その後、調整がつかないようでは、また振り出しに戻ってしまいますので、そこはしっかりとIOC(国際オリンピック委員会)と連携していきたいと思っております」
10月21日の都知事会見。東京五輪のボート・カヌー会場の宮城県への変更案を打ち出した小池都知事にしては、ずいぶんと歯切れの悪い印象が残る回答だ。IOCのトーマス・バッハ会長の発言が伏線にあるのか。バッハ氏は18日、「開催都市として選ばれた後に競争のルールを変えないこと」と、小池都知事を牽制(けんせい)するかのような発言をした。小池都知事は東京湾岸の「海の森水上競技場」から宮城県の長沼ボート場に移すことで、「復興五輪にしたい」と語っていたのだが……。
一方、総額900億円に上る東京都立広尾病院の不透明な青山移転計画を巡っては、怒りの声が収まらない。10月26日に専門家が移転などを議論する2回目の「首都災害医療センター(仮称)基本構想検討委員会」が開かれる。
告発した広尾病院の前院長で、半官半民の公社病院を運営する東京都保健医療公社副理事長の佐々木勝氏(64)は憤る。
「この会議自体、そもそもが諮問機関で、都が専門家に『どうですか』と聴いているだけ。決定権はないんです。都議会で土地取得の予算は通っているし、都としては形を作って執行するだけなんです。その場で少数の医師会の理事が反対意見を言っても、多数決で押し切られてしまうでしょう」
佐々木氏は続ける。
「職場の幹部からは『病院経営本部が決めたことだから、先生がゴチャゴチャと波風を立てることはない』と言われた。『それは命令ですか』と聞いたら、『いえ相談です』と。患者のことを一番に考えないといけないのに。このままだったら、都病院経営本部はもう解体したほうがいい」
大きな話題に隠れるような悩みのタネは尽きない。