「この家の主人になってください」
卓球のリオ五輪日本代表、愛ちゃんこと、福原愛(27)は、同台湾代表の江宏傑(27)に新居の鍵を渡され、そうプロポーズされた。
愛ちゃんの左手の薬指には、江がデザインした結婚指輪が光る。ダイヤモンドをあしらった豪華な装飾で、卓球のボールをモチーフにしている。世界でたったひとつの愛の証しだ。
9月1日に東京都内の区役所で婚姻届を提出した二人。21日に東京で、翌22日は台湾・台北でそれぞれ結婚会見に臨んだ。
「日本ではかれんな本振り袖姿を披露する一方で、台湾ではフレンチスリーブのスパンコールドレスで大人っぽい装い。お国柄を意識した演出が目を引きましたね」(会見に出席した記者)
日本の会見で選んだのは、名古屋の老舗呉服メーカー、藤娘きぬたやがつくる総絞りの本振り袖だ。藤や菊、梅など図案化された四季柄が華やかだ。
同社担当者によれば、着物での会見は愛ちゃんたっての願いだった。本人はこう話したという。
「日本人ですので、着物を着たいのです」
同社に福原サイドから、着物をお願いしたいと連絡が入ったのは結婚から間もない9月7日ごろ。柔らかな色合いで、との希望に沿って同社が選び、愛ちゃんが試着して決めた。
「すてきな着物でうれしい」
満面の笑みで袖を通したという。
この振り袖姿について、ネット上では「既婚なのになぜ振り袖なのか」などの論議も巻き起こるほどだった。東京・銀座の「きものギャラリー泰三」の高橋泰三さんは、こう説明する。
「結婚のお披露目をした会見ですから、披露宴と同じです。振り袖姿だったとしても何も問題ありません。京都で、結婚のあいさつ回りをする際、振り袖姿の女性も多いですよ」
気になるのが、結婚後も現役を続けるのか否か。愛ちゃんが、心境を語った。
「夫を支えながらも4年後の東京五輪を目指したい」「後輩のためにも女性アスリートが選手を続ける道を切り開きたい」
読者の多くが覚えているであろう、涙を流しながらラケットを握る“泣き虫愛ちゃん”。いつのまにか、凜(りん)とした強さと美しさを備えた「日本女性」へと成長していたのだ。
※週刊朝日 2016年10月7日号