サービスを受けるために必要な「SIMカード」は、LINEのアプリや専用ホームページなどオンライン経由でしか申し込めない。
格安スマホの他社のように、店舗を構えているわけではないため、目につきにくい。ネットが得意でない高齢者が申し込む場合、当面は子どもや知人に頼む必要がありそうだ。
格安スマホが大手より低料金なのは、通信回線を大手から借りるうえ、店舗網や人件費など販売経費を抑えているから。LINEモバイルもNTTドコモの回線を借りるため、通話エリアはドコモと同じになる。
既に端末を持つ人はSIMカードのみを、持たない人は8種の対応端末(1万3800~4万9800円)とのセットで申し込める。
格安スマホの事業者は現在、約550にも及ぶ。
新たに参入した「LINEモバイル」を率いるのは、2月に就任したばかりの嘉戸彩乃社長。LINEの子会社とはいえ、まだ31歳の若きホープがトップだ。
08年に大学を卒業し、UBS証券に入社。テクノロジー&テレコム業界のM&Aを手がけてきた。15年2月にLINEに入社し、格安SIM事業の立ち上げに奔走してきたという。
「LINEは、スマホをもっと便利にしたい。一つは、スマホの普及率を上げること。また、毎月のデータ通信容量を使い切り、通信制限がかかることもよくない。新しい時代に合った料金体系が必要だと思った」
今後は、LINEの定額音楽配信サービス「LINEミュージック」の通信量も、使い放題の対象とする方針だ。当初始めるサービスは「1.0」と呼んでおり、バージョンアップした「2.0」へ拡充していく方針という。
LINEに対抗するように、他社も新サービスを次々と始めている。
格安スマホブランドの「フリーテル」は9月から、人気ゲーム「ポケモンGO」を使うときの通信料を無料にするサービスを始めた。「楽天モバイル」は通話アプリ「Viber」と連携し、固定電話や携帯電話に低価格で通話できるプランを打ち出している。
業界から衝撃的に受け止められたLINEモバイル。ただ、消費者の目からみると、魅力的に映る期間はそう長くないかもしれない。11年のサービス誕生から瞬く間に広がった勢いを、格安スマホでも発揮できるか。LINEの新たな挑戦が始まる。
※週刊朝日 2016年9月23日号より抜粋