夫は話題のCM「宇宙人ジョーンズ」(サントリー「BOSS」)や「こども店長」(トヨタ自動車)など、息の長いシリーズで知られるCMプランナー&コピーライター・福里真一。妻は「23区」(オンワード樫山)やファッションビル「VIVRE」の広告を手がけるコピーライター&クリエイティブディレクター・三井明子。時代の最先端を行く二人の出会いの場は、大手広告会社。さぞ華やかでドラマチックだったのではと思うのだが……。
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妻:私はコピーライターの養成学校に通いながら、電通で派遣社員をしていました。そこに新入社員で入ってきたのが、福里でした。
夫:1992年入社です。いわゆるバブル入社で、“半沢直樹”(池井戸潤の小説「半沢直樹」シリーズの主人公)と同期ですね。
妻:部署の女性たちはみな、今年はどんなかっこいい新人が入社してくるかなと期待していたんですが……。
夫:陰でバカにされているのがわかりましたよ(笑)。
妻:服装一つ見ても、ポロシャツの衿を立てて着こなしているいかにもな電通マンの中に、一人だけ地味~な背広姿の福里がいました。みんながっかり(笑)。
夫:面接のとき、言ったんです。「私は人とコミュニケーションをとることが得意ではありません。ですから、人々が何を考え、何を求めているのかを調査したり、研究したりするような部署で仕事をしたいです」って。
妻:ところが、配属されたのは、電通の中でも人気のクリエイティブ部門だったんですよね。
夫:入社試験の面接でほかの学生が話すことを聞いていると、「世界中を放浪してきました」とか、「体育会の部長として何百人もの部員を仕切ってきました」とか、「卓越したコミュニケーション活動を」という、当時の電通のスローガンを体現しているような志望者ばかりでしたから、最初から「浮いているな」と自分でも思いましたよ。そもそも会社というのは、明るくて元気な若者が好きですよね。