夫:僕は漫画誌の仕事で、インドで法王にインタビューすることになっていて。

妻:成田に到着してからも成田エクスプレスの中でノンストップでしゃべっている。最後、山手線の駅で想田君が電車を降り、「これ、電話番号」と紙を渡されて。

夫:「今度はダライ・ラマの話をしましょう」と。

妻:ダライ・ラマの話は聞きたいと思っていたので、私も咄嗟にポケットにあった映画の半券の裏に電話番号を書いて渡した瞬間、ドアがピシャ。

夫:また、すぐそうやってドラマっぽくする(笑)。

妻:帰米後、想田君から留守電が入っていたので電話したら、「いまから食事しませんか。ダライ・ラマの話をしましょう」。急いで着替えて日本食レストランに出かけていったら、相変わらずよくしゃべるし、その日は夜中まで話し込み、そろそろ帰ろうとしたら、「寒いから僕のジャケットを貸すんでウチに寄りませんか?」。これはまずいかなぁと思いながらも、寒さに負けた。

――彼の部屋に行くと、小津全集に目がとまった。

妻:まんざら話を合わせていただけじゃないとわかった。だけど「どっちがいいですか?」と出されたジャケットが、なんとも奇抜な紫と黄色で、究極の選択。

夫:俺、そんな色のジャケットを持っていたかなぁ。

妻:翌朝一番に電話がかかってきて「想田です! 昼飯でも」。この人、友達いないんだなって。

夫:友達いっぱいいるよ!それにもうお昼だったよ。

週刊朝日 2016年4月22日号より抜粋

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