「昨年12月には、現場付近に残されたたばこの吸い殻に付着していた唾液のDNA型が、九州の指定暴力団関係者のものと一致したと報じられた。しかし、それだけでは有罪を立証するには不十分。犯人を逮捕しても、口を割らない限りは犯行を依頼した人物まではたどりつけない」

 そのなかで、3月29日に王将は驚くべき報告書を発表した。内容は、王将が「反社会的勢力と関係があるかどうかを確認することを目的」として、第三者委員会が検証したもの。記述はA4用紙で93ページにも及ぶ。そこには、創業者一族を中心とした密室経営によるガバナンスの欠如が、次々に記されている。

 注目すべきは、報告書で「A氏」と匿名で記されている人物との“異常な関係”だ。全国紙記者は言う。

「王将は、A氏と1990年代半ばから総額260億円ほどの不透明な不動産取引などを繰り返し、うち約170億円を回収できずに損失処理していた」

 王将が自主的に調査結果を発表したのも、このA氏が反社会的勢力と関係しているとの報道が出ているためだ。東証1部上場企業である王将は、本来であればこういった人物との接点はあってはならないはず。それがなぜ、このような関係になってしまったのか。

 それを理解するには、王将の歴史をさかのぼる必要がある。70年代後半から創業者の加藤朝雄氏は、アサヒビールに勤めていた望月邦彦氏(79)を信頼し、ことあるごとに経営の相談をしていた。

 望月氏は、後に朝雄氏に請われて王将の副社長として入社し、93年に社長に就任する。退任後も会長や相談役を務め、王将の歴史を最もよく知る“キーマン”の一人だ。望月氏は、77年に朝雄氏と初めて会ったときの印象をよく覚えているという。

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