最も重要なのは患者に丁寧に説明すること(※イメージ)
最も重要なのは患者に丁寧に説明すること(※イメージ)

「3回も休職と復職を繰り返しました」

 こう語る東京都在住の中田守さん(仮名・36歳)は、7年間うつ病と闘った。電気機器設計の仕事をするなか、28歳のときに不眠の症状に悩まされるようになり、仕事や家事へのやる気がなくなり、さらに趣味だったテレビゲームにも興味がなくなったという。「自分なんていなくてもどうでもよい」という気持ちが次第に強くなった。

 うつ病は、日常生活に支障が出るほどの気分の落ち込みが毎日続く病気だ。厚生労働省の調査によると、2014年の総患者数(躁うつ病を含む)は111.6万人と過去最多になった。

「国の自殺対策や医療計画に精神疾患が加わったことによって市区町村レベルでうつ病対策が立てられるようになり、自殺者は減っています。しかし一方で、単純に薬物療法だけではよくならない例が増えている印象があります」

 と杏林大学病院の渡邊衡一郎医師は話す。職場復帰をしてもまた発症する、薬を何種類試しても効果がない。こうした治りにくいうつ病を難治性うつ病という。

 中田さんは休業をして抗うつ薬による治療を受けた。半年後症状が治まり、医師の判断で薬も通院もやめた。「すっかり治ったと思った」と話す中田さんだが、復職後約2年で再び発症。2度の休職を繰り返した。

 治らない場合は、「診断を再検討することが必要」と渡邊医師は話す。渡邊医師は、難治性うつ病の再診断と治療に取り組んでいる。

 うつ病の診断を見直すとき、まずは「双極性障害」の可能性を疑う。双極性障害は「躁うつ病」とも呼ばれる病気。その名のとおり、うつ状態と躁状態(ハイな状態)を繰り返す。

 双極性障害はI型とII型があり、躁の程度が異なる。I型は、「一晩で何百万円も使ってしまう」「暴力的になる」など、社会的なダメージを受けるような極端な行動が目立つ。だがII型は、「気が大きくなって30万円使う」という程度の軽い躁状態なので、本人も周囲も気づかないことが多く、見逃されやすい。うつ病と言われている人の3分の1が双極性障害か双極性障害の傾向があるという。

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