人質奪還に来た信繁に、「助けに来てくれたのー!」と、いきなり抱きついた(デレ)かと思いきや、「ババさまはどこだ?」と問われれば、「知らないっ」とふくれっ面(ツン)。その後は「あっちゃこっちゃ連れ回されて、いい加減疲れてんですけど!」と、怒涛のツンツン攻撃で、もはやデレ要素すら、ツンに見える始末。
室賀謀殺事件を目撃してしまったきりは、「あなたたち、(祝言の日に)これでいいの!?」と、信繁をなじる。この時、思いました。ああ、ほんとに「真田丸」の主役が、きりじゃなくてよかったと。炎上する本能寺で、信長の前に幻として現れたり(「江[ごう]」です)、家康と一緒に伊賀越えしたり(「江」です)、歴史上存在しなかった場に、存在してしまう変幻自在なヒロインじゃなくてよかったと。
むしろきりは、そんなヒロインへのアンチテーゼなんじゃないのか。きりみたいな現代テイストの女子を、大河の主役にしたらダメだっていう、脚本・三谷幸喜さんからの警鐘じゃないのか。なんせ、きりは信繁の部屋の壁に「おにぎり」を投げつけている。そう、我々は「花燃ゆ」で学んだはずだ。大河ドラマで、「おにぎり」握ってくる女には気をつけなきゃいけないと。
※週刊朝日 2016年4月8日号