「月に1、2回合コンに行くけど、足湯でなんて今までなかったよね」

「足湯でって言われたほうが行きたくなる。こんなの初めてだったから楽しみでした~」

“足湯”という響きはオンナ心をつかむようだ。

 アルコールもほどよく入ったところでいざ足湯へ。しかし、事前準備が必要だ。そう、裸足になったときに足の指の間に張りついている靴下の毛玉の駆除だ。「足湯に入ったら毛玉が水面にプカー」は絶対に避けなければならない。食事の合間に隣の友人を見れば、視線は女性にあるが、テーブルの下ではすでに靴下を脱いで忙しく手が動いていた。もちろん記者も抜かりなく駆除を終えた。

 お酒を片手に皆で足湯に入る。ぬるすぎず熱すぎず、いい湯加減だ。

「気持ちいい~」

 体を伸ばしてリラックス。カクテルを持った美女が足元あらわに頬を染める。素敵な光景だ。壁のスイッチを押すとジャグジーが作動、足湯内の照明が紫、緑、ピンクと変わっていく。足先が触れ合いそうで、触れない。文字通り水面下での駆け引きは始まっているのだ。せっかちな友人が女性の肩に手を回そうとしたところ、

「それはちょっと……」

 すげなくあしらわれていた。まだ機は熟していないと見た記者は、カラオケで同世代のアイドル「嵐」のヒット曲を歌って盛り上がりを試みたが、拳一つ分の距離を詰めることはかなわず。「巻き起こせ」の歌詞もむなしく、恋の嵐は巻き起こらなかった。

 足湯マジックさえあれば女性とどうにかなれると過信し、酒をいつも以上に飲んだ結果、頭痛と二日酔いと落胆で翌午前中の会議も休んでしまった。デスク、申し訳ありませんでした。

 記者の春はまだ遠い。

週刊朝日 2016年3月25日号

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