理系科目は理論を理解していれば、スパッときれいな答えが導き出せるところが魅力なのだとか。「理系の職業で何になるか考えたとき、人の体温が感じられる仕事をしたいと思って、一番に思いついたのが医師でした」(同)
埼玉の自宅から高校まで片道1時間半かかることもあり、勉強時間は1日3時間と、受験生にしては短い印象だ。その分、間違った問題は、正しい答えがどのように導き出されるのか、その理論が自分の中で完全に再現できるまで徹底的に確認して、一度で知識を定着させていった。
情報収集や他の受験生の進度を確認するために、予備校の短期集中講座を受けることもあったが、基本は市販の参考書で独学した。それができたのは、高校1年の冬、受験について徹底的に情報収集していたから。「この時期までにここまでできていればいい、この参考書をこういう順番でやるのがいい」といったステップが見えていたので、焦らず、計画的に勉強できたという。
秋山さんいわく、「受験勉強とは、求められていることを把握して、目標に到達する力が試されるもの」なのだそう。やはり天才は言うことが違う。
しかし、模試で全国1位を取っても、偏差値93.7を記録しても、素直に喜べなかった。
取った点数よりも、落とした点数が気になって、「今回はたまたま解ける問題が出たけど、本番はできない問題が出るかも。落ちるかも」といつも不安で、家族や友達に泣き言ばかり言っていた。「いま思えば、なんであんなに不安だったのか不思議です」と秋山さん。完全無欠にみえても悩みはあった。
12年4月、晴れて東大理IIIに現役入学した秋山さん。このまま順風満帆な人生を歩むかにみえたが、大学3年の夏に人生観を変える出来事に遭う。友達と旅行中に自転車事故に遭い、頭部を強打したのだ。頭蓋骨を骨折し、くも膜下と硬膜外から出血。開頭手術を受け、生死の境をさまよった。