地元のお年寄りも晩酌で楽しめるワインに(※イメージ)
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 フード&ワインジャーナリストの鹿取(かとり)みゆきさんが、日本ワインを紹介する。今回は、長野県中野市の「大俣シャルドネ 2014(白)」。

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 北信州に位置する中野市。一帯は、水はけのよい広々とした扇状地で、雨も少ない。そのため、1970年代から、ブドウ栽培が盛んだった。シャインマスカットの出荷量は、いまも日本一である。この地には、4人のブドウ農家が設立した、たかやしろファームというワイナリーがある。

 2000年、大手ワインメーカーの依頼で欧州系のブドウを増やし始めたものの、話は立ち消えに。ならば自分たちでワインを造ろうと考えた。「地元の人たちに、本格的なワインを飲んでもらいたいとも思った」と、社長の武田晃(こう)さん。かつて農家が関わったワイナリーには、余剰の生食用ブドウを加工してワインを造るところもあったなかで、彼らは狙いが明確だった。

「大俣シャルドネ」も欧州原産のシャルドネが原料だ。十分に熟すと桃や洋梨の風味が芳しく仕上がり、国内外で人気が高い。武田さんたちが願ったように、いまでは土地の農家の人たちから、80代のお年寄りまでが晩酌で楽しむワインになった。

(監修・文/鹿取みゆき)

週刊朝日  2016年3月4日号

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