つまり、浮石寺が仮処分の執行日(決定から2週間以内)から3年が過ぎた時点でも訴訟を提起しなければ、仮処分の取り消し申請が可能となり、認められれば「観世音菩薩坐像」は晴れて日本に返還されるというわけだ。
だが、「事はそう簡単ではない」と前述の弁護士が続ける。
「韓国政府と観音寺のいずれかが仮処分取り消し申請をした場合、裁判所はまずその申請自体が妥当かどうかについて審査します。仏像を日本側に返還するために韓国政府が取り消しを求めた場合は裁判所がこれを認めない可能性は低いですが、観音寺が利害関係者であるかどうかについてはどこまでも裁判所の裁量によります。つまり、認められない可能性もある」
もし、韓国政府が政治的な理由から返還を延ばしたり、観音寺が申請した仮処分の取り消しが認められなかったり、また、浮石寺が本案訴訟をしない場合は、このまま移転禁止の状態が続いていくのだという。
「瑞山浮石寺金銅観世音菩薩坐像を元の場所に奉安委員会」の李相根共同執行委員長は言う。
「仮処分の取り消し申請が提出されれば、そのときは訴訟しようと準備している。日本の資料をあたると、観世音菩薩は一方的な請求により渡来したという記述もあり、これは略奪を意味するものと思われる。訴訟の準備と並行して国際機構へ訴える準備もしているところです」
事態はどう動くのか。
(本誌取材班=松岡かすみ、牧野めぐみ、亀井洋志/黒田 朔、菅野朋子)
※週刊朝日 2016年3月4日号
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