天候に左右されることも多く、一回が長丁場となるプロゴルファーの試合。そこで大事なのは動じない神経だと、丸山茂樹氏は自身の経験を持って話す。

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 1月最後の男子の試合は、日米両ツアーとも悪天候にたたられました。

 日本男子ツアーの開幕戦となったアジアンツアーとの共同主管競技「SMBCシンガポールオープン」(1月28日~2月1日、シンガポール・セントーサGCセラポンコース)は初日から雷雲に襲われました。

 順延を繰り返し、最終ラウンドも最終組が16番をプレーしているときに強烈なスコールとなり、雷雲も接近。競技は中断されましたが、約3時間後に月曜日への順延が決まりました。

 驚いたのが招待選手のジョーダン・スピース(米)ですよ。猛チャージで首位に2打差までいって迎えた18番のグリーン。2メートルのバーディーパットを打とうとしたところで雷雲接近を知らせる笛が鳴ったんですって。それほど大事じゃないパットだったら、翌日に持ち越しても全然構わないですよ。でも優勝がかかってますからね。これはショックだったと思います。

 それでも翌日、しっかり一発で沈めたのが立派なところ。最終的に2位でしたけど、彼のハードスケジュールを思えば上々ですよ。米PGAツアーのあったハワイから欧州ツアーのアブダビを経てシンガポールへの転戦ですから。いろんなイベントに引っ張りだこだったでしょうしね。この22歳はたいしたもんだ。

 
 米ツアーは「ファーマーズ・インシュアランス・オープン」(1月28日~2月1日、米カリフォルニア州ラホヤのトーリーパインズGC)。これも悪天候のため、決着が月曜日までずれ込みました。岩田寛(ひろし・35)が日本勢で唯一決勝ラウンドへ進み、今シーズン最高の18位でした。トップ10も狙える位置で頑張ってましたけど、最終ラウンドで八つスコアを落としてしまいました。

 悔しいでしょうけど、前から言ってますように、まずは25位以内を積み重ねることが大事ですから、前向きにとらえればいいですよ。25位以内に10回入れば、賞金が50万ドルぐらいになります。あとはどこかでトップ10に入って、調子が悪いときに頑張って何度か予選を通れば、もうシード権をゲットできます。プロゴルファーですから常に優勝争いすることを考えてるはずなんですけど、とにかくその試合ごとに、そのときの調子や状態にしたがって目標を立てるのは大事です。無理をしないことが一番だと思いますね。

 今回でヒロシも身をもって学んだでしょうけど、米ツアーはとことん72ホールやらせますんで。日本みたいに「はい終わり、さよなら」ってことはないですから。なにしろ過酷です。サスペンデッド、再開、サスペンデッド、再開、はい次の日になりました、ってのはよくあります。僕は1打も打たずに12時間待たされて、午後8時50分にティーショットだけ打って、翌朝の8時前からプレーしたこともありますよ。体力勝負ですから、負けないようにしてほしいです。

 そういう過酷な状況になったときに大事なのは、動じないことだと思います。「明日も早いから寝なきゃ」なんて思いすぎない方がいい。たとえ眠れなくても、「寝られないならそれでいいや。なるようになるよ」ぐらいの感じでいた方が、いい結果につながると思いますね。

週刊朝日 2016年2月19日号

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丸山茂樹

丸山茂樹

丸山茂樹(まるやま・しげき)/1969年9月12日、千葉県市川市生まれ。日本ツアー通算10賞。2000年から米ツアーに本格参戦し、3勝。02年に伊澤利光プロとのコンビでEMCゴルフワールドカップを制した。リオ五輪に続き東京五輪でもゴルフ日本代表監督を務めた。セガサミーホールディングス所属。

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