――声楽家の五十嵐喜芳(きよし)氏が経営する「マリーエ」で6年間勤めた後、独立して1983年に「アルポルト」を開店。アルポルトとは「港にて」という意味。心休まる母港のイメージだ。

妻:でも、お客さんが来てくれない。従業員のお給料を払えるだろうか、と不安になったこともあります。そのとき彼が、「石の上にも三年というじゃないか。3年は我慢しよう」と言うので、3年なら我慢できるのかな、と。

夫:そうは言ったものの、実は僕もかなりまいっていた(笑)。

妻:でも、毎朝、長女を抱っこして魚屋さんに仕入れに行っていたじゃない。

夫:子どもの顔を見ていれば、頑張ろうっていう気になるからね。

妻:私は、この人の作る料理が認められないわけはないと思っていたのよ。そんなとき、俳優の有馬稲子さんが朝日新聞で紹介してくださったんです。それからです、お客様が次々と。

週刊朝日  2016年2月5日号より抜粋

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