「血便」は、何らかの疾患のサインである場合が多い。
便に血が混じっている場合、出血した箇所によって呼び名が違う。食道や胃、十二指腸など上部消化管からの出血を「下血」、下部消化管からの出血を「血便」という。
血便から疑われる病気で、最も頻度が高いのが痔だ。その他、大腸がんやポリープなど、大腸にまつわる疾患が多い。
血便は、直ちに医療機関を受診せず、様子見をする患者が多い。今日たまたま出血したのか、痔なのか、食べ物の色が血のように見えるのか、自分では判断がつかないからだ。だが、直ちに医療機関の受診が望ましい場合もある。
千葉県在住の吉本明彦さん(仮名・65歳)のケースもそうだ。
吉本さんは、2015年のある朝、便意を催してトイレに駆け込んだ。暗赤色の便が出て、血の色で便器の底が見えないほどだった。驚いたが、特に腹痛もない。痔か何かだろうと考え、様子を見ることにした。ところが、その後も1時間ごとに便意があり、血は鮮やかな赤色に変化してきた。立ちくらみや吐き気、冷や汗も出てきたため、不安になって救急車を要請し、亀田総合病院に搬送された。
診察した消化器内科の山内健司医師は語る。
「吉本さんには軽度の血圧低下があり、初期の出血性ショックが疑われました。点滴と輸血の準備をおこない、腹部造影CT(コンピューター断層撮影)検査をしたところ、上行結腸に大腸憩室があり、そのひとつに出血の所見がありました」
大腸憩室とは、大腸の壁にできた小さなくぼみのことだ。大腸の筋肉の層のところどころには、粘膜に栄養を補給する血管が貫通して走っている。血管部分には筋肉の層がないため、圧力に弱く、腸内の圧力が慢性的に高くなると、そこだけ風船のように内側から外に押し出されてしまう。