私「……ありがとうございます」

ヤ「(帰ってきて)どうぞ。美味しいかどうかわかりゃせんけんどね!」

 メチャクチャ美味かった。

私「わ! 美味しいですねっ!! ヤスエさんが漬けたんですか?」

ヤ「いやぁ、ここんちの和尚の嫁よ」

謙遜じゃなかったのか……。

ヤ「『笑点』は観てるんですけどねぇ~」

 ほらきた。会話のとっかかりとしての『笑点』。

私「私は出てないですけどね(苦笑)」

ヤ「ほーじゃねぇ……。なんでかねぇ?」

私「なんでですかね……。(オシンコ食べて)美味いですね、これ!」

ヤ「孫も観てますよ」

私「……ありがとうございます」

 なんで俺が礼を言わなきゃならんのだ。

 出番だ。けっこうウケた。

ヤ「いやぁ、孫連れてくりゃよかったわぁ。平日だから学校だもんでね! こんなに面白いもん聴かせにゃいかんね!(真顔で)」

私「ありがとうございます。今度、またぜひ!」

ヤ「喜ぶかどうか、わかりゃせんけんどね!!(嬉しそうに)」

 なんだ? 口癖なのか? 口癖だといいな……。

私「ではこれで。大変お世話になりました」

 10分くらい待っただろうか。タクシーが来た。運転手さんが、

「おー、ヤスエさんかい!!」

 ヤスエさんは、

「田村さん! 大事な人だから、安全運転でねぃー! 乱暴なら承知せんよーっ!」

 と笑った。

 車内で田村さんが「ヤスエさんの上客だから」とのど飴をくれた。「ヤスエ」は名字なのか下の名前なのかは、田村さんも知らなかった。

週刊朝日  2016年1月22日号

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