落語家の春風亭一之輔さんは、ある仕事先で受けた接待の思い出をこう語る。
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昨年末、地方のお寺から「御施餓鬼(おせがき)で落語を一席」というお仕事を頂いた。
出番1時間前。控室に白石加代子さん似の割烹着姿のおばさんが入ってきた。おばさんのイントネーションは各自想像してください。
おばさん「失礼しますぅ」
私「はい?」
お「本日、住職からご接待係を仰せつかりました。ヤスエですぅ(深々とお辞儀)」
私「はぁ、よろしくどうぞ」
「ヤスエ」が名字なのか下の名前なのかは聞かなかったが、あんまり下の名前はいきなり名乗らないだろう。
ヤスエ「お茶とお菓子でございますぅ」
私「ありがとうございます」
ヤ「一応、こちらの名物の○○餅といいますぅ、美味しいかどうかわかりゃせんけんどね。よかったらどうぞ(笑)」
勧め方としてはいかがなものか。「一応」って……。
私「いただきます。(食べて)ん? 美味しいですよ!」
ヤ「そらぁま、名物ですからぁ(嬉しそうに)」
なんだ、自信あるのか。
ヤスエは用が済んでも和室の片隅に座っている。10分経過。限界だ。
私「あのー、取り立ててして頂くこともないので……。よろしければ……どうぞ(どっか行ってくれないか、の意)」
ヤ「オシンコ、召し上がりますぅ? (返事を待たず)とってきよう(素早く立ち上がる)」