接待の思い出…(※イメージ)
接待の思い出…(※イメージ)
この記事の写真をすべて見る

 落語家の春風亭一之輔さんは、ある仕事先で受けた接待の思い出をこう語る。

*  *  *

 昨年末、地方のお寺から「御施餓鬼(おせがき)で落語を一席」というお仕事を頂いた。

 出番1時間前。控室に白石加代子さん似の割烹着姿のおばさんが入ってきた。おばさんのイントネーションは各自想像してください。

おばさん「失礼しますぅ」

私「はい?」

お「本日、住職からご接待係を仰せつかりました。ヤスエですぅ(深々とお辞儀)」

私「はぁ、よろしくどうぞ」

「ヤスエ」が名字なのか下の名前なのかは聞かなかったが、あんまり下の名前はいきなり名乗らないだろう。

ヤスエ「お茶とお菓子でございますぅ」

私「ありがとうございます」

ヤ「一応、こちらの名物の○○といいますぅ、美味しいかどうかわかりゃせんけんどね。よかったらどうぞ(笑)」

 勧め方としてはいかがなものか。「一応」って……。

私「いただきます。(食べて)ん? 美味しいですよ!」

ヤ「そらぁま、名物ですからぁ(嬉しそうに)」

 なんだ、自信あるのか。

 ヤスエは用が済んでも和室の片隅に座っている。10分経過。限界だ。

私「あのー、取り立ててして頂くこともないので……。よろしければ……どうぞ(どっか行ってくれないか、の意)」

ヤ「オシンコ、召し上がりますぅ? (返事を待たず)とってきよう(素早く立ち上がる)」

次のページ