フランス1984
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完成間近! オールカラー『聴け!』追加情報
France 1984 (Cool Jazz)

 この原稿を書いているのは月曜日(6月13日)ですが、昨日、オールカラー版『マイルスを聴け!アコースティック1945-1967』(双葉社文庫)の再校の校正が終わりました。もう一度チェックして、いよいよ印刷ということになります。書店の店頭に並ぶのは、今月の29日か30日になるようです

 そこで今回は先週の続報として、もう少し具体的に内容についてご紹介しておきたいと思います(とはいえ、この本に関しては本質的な違いはなく、だいたい前回ご報告したとおりなのですが)。まず掲載点数ですが、153点になります。約22年間でこの数字ですから、いかに枚数が多いかがわかろうというものです。そして今回は『聴け』史上初のオールカラーということになりますが、これは予想以上の豪華さです。だいたい想像はついていましたが、それ以上です。これまでオールカラーのジャケット掲載ガイドブックはありましたが、ブートレグまで差別することなくこのような豪華な仕様で紹介した本は、あまりなかったように思います。あとは実際に書店で手にとってご覧ください。次いで前回抜粋した「まえがき」のエンディング・パートです。

 この本は1992年の初版(ヴァージョン1)のときから、いわゆるCDやレコードのガイドブックとしての役割を果たすことを意図的に放棄している。なぜなら書名にあるように「マイルスを聴く」あるいは強制的に「マイルスを聴かせる」ための本であり、すべてのアルバムや音源を「聴かなければならない」ことを大前提としている。「聴け!」とは、すべての音源を等価として捉え、すべての音を全身で受けとめ、受け入れることにほかならず、それが「マイルスを聴くこと」であるという確固たる信念に基づいている。世評や定説に惑われず、さらには"つまみ食い"ならぬ"つまみ聴き"を良しとせず、すべてのアルバムに接し、清濁合わせ飲んでこそ立ち現れる世界観をガッシと受けとめる。それを「マイルスを聴くこと」と捉えている。

 本書では、前述したように1945年から67年までが対象となっている。通称アコースティック・マイルスの時代。のちに「オレの音楽をジャズと呼ばないでくれ」と言ったマイルスが、まだジャズの圏内で「ジャズの向こう」に進もうとしていた時代ともいえる。その変化と進化は、のちのエレクトリック・マイルスの時代に比して緩やかに映るかもしれないが、いずれのアルバム/音源を聴いた人は、そこにジャズの極限的な表現が示されていることを聴きとるだろう。そして67年以後のジャズが、いつしか変化や挑戦を回避する方向に向かったことに気づかされるだろう。

 マイルス・デイヴィスの音楽は、常に最前線にありつづける。プレスティッジ時代を象徴する『クッキン』以下の現在進行形シリーズ、『カインド・オブ・ブルー』『フォー・アンド・モア』『ネフェルティティ』『ソーサラー』等、マイルスが「過去」につくった音楽は「未来のサウンド」であり、しかしその「未来」であったはずの「現在」は、まだマイルスに追いついていない。だからぼくはこう言いつづけたい。マイルスを聴け!

 さて、新着音源のご紹介が遅れました。メンバーや収録曲はデータをご覧ください。もはや補足する必要はないかと思います。肝心の音質ですが、迫力たっぷりのオーディエンス録音で、この時代の過激なサウンド攻勢には合っていると思います。それではまた来週。

【収録曲一覧】
1. Speak / That's What Happened
2. Star People
3. What It Is
4. It Gets Better
5. Something's On Your Mind
6. Time After Time (incomplete)
7. Lake Geneva
8. Hopscotch (incomplete)
9. Star On Cicely
10. Jean Pierre
11. Code M. D.
(2 cd)

Miles Davis (tp, synth) Bob Berg (ss, ts) John Scofield (elg) Robert Irving (synth) Darryl Jones (elb) Al Foster (ds) Steve Thornton (per)

1984/7/4 (France)