「これは戦争行為だ。過激派組織『イスラム国』(IS)を破壊する」
11月16日、オランド仏大統領は、上下両院を招集したベルサイユ宮殿でそう宣言した。今回のテロについて「シリアで計画され、フランスで実行された」との見方を示した。
首謀者として浮かび、死亡が確認されたのは、モロッコ系ベルギー人のアブデルハミド・アバウド容疑者(27)。アバウド容疑者はベルギーの首都ブリュッセルの貧しいモレンベーク地区出身。IS内では遺体を車で引きずり回す残虐なビデオにも登場するなど宣伝役も担っていたとされる。2013年前後からシリアとベルギーを行き来していた形跡があるとされている。
にわかに浮上したISの拠点・ベルギー。軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏はこう指摘する。
「確かに人口に対して過激思想を持つ人の割合は高いが、突出しているわけではない。テロ志向の高い人間がいれば、どこの地域でもテロの土壌になりうる」
また今回のテロは、テロ実行地域に組織的な根を張ったものではとの見方も。「シリア・イラクのIS支配地域からの単純なトップダウンの指令によるものだけではなく、現状に不満を持つ現地のグループがISに自主的に参加し、資金や技術の支援を受けて実行したのでは」と、東京大学東洋文化研究所の長沢栄治教授は言う。