ベルギーといえば、欧州連合(EU)の本部があり、イスラム勢力の拠点のイメージはあまりない。なぜテロの拠点となったのか。シリアでの取材経験が多いジャーナリスト、村上和巳氏はこう言う。
「フランスへの動線として最も近いことが一番の理由ではなかったか。国の面積が小さい分、移動もしやすく、逃げようと思えば他国にも逃げやすい。過去に大きなテロも起こっていないため、警備も比較的ゆるいことから、拠点に据えやすかったのではないか」
すでに4年以上内戦が続くシリアでは、エジプト・シナイ半島でのロシア機墜落をきっかけに、ロシアによる空爆が激化。一般市民を含む100人を超す死者が出ているという。
前出の黒井氏は、「ロシアの空爆の95%近くは反政府勢力への攻撃。反政府派と一般市民を区別するのは不可能。米国のIS空爆の効力がいまいちなのは、そうした市民への被害を考えているため」だと分析する。
空爆下のシリア国民は、死と隣り合わせの現状をどう見ているのだろうか。
「表だってはいわないが、できることなら早くアサド政権を倒してほしいという感情を持つ人が大多数。欧米も助けてくれない疎外感が蔓延(まんえん)しています。内戦がずっと続いている、行き場のない状態が一番困ると聞きます」(村上氏)
パリでの同時多発テロ事件の前日、レバノンの首都ベイルートで、ISによる連続自爆テロが発生。一般市民の死者43人を出す惨事だったが、パリに比べると報道の扱いは小さかった。
こうした生命の扱いの差が新たなテロの土壌となりうるとの不満も出ていて、事態は複雑だ。
※週刊朝日 2015年12月4日号