照ノ富士は九州場所に出る心境について「不安はある。40~50%の力で通じるのかって」と語ったという (c)朝日新聞社
照ノ富士は九州場所に出る心境について「不安はある。40~50%の力で通じるのかって」と語ったという (c)朝日新聞社
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相撲ってタイミングがあるんです。大出世する力士はチャンスを逃さずにパパッと駆け上がっていくんですよ。彼はこの九州場所を休場すると、横綱になれるとしても2年くらいかかってしまうかもしれない。下手すると、一生横綱になれないかもしれない。だからこそ、無理を承知で出場したんだと思います」

 ベテランの相撲記者がそう語る「彼」とは、大関・照ノ富士(23)=モンゴル出身、伊勢ケ浜部屋=のことだ。

 先場所13日目の稀勢の里戦で敗れた際に痛めた右膝は「前十字靱帯損傷」。全治1カ月の重症だった。無理すれば靱帯断裂の可能性もあったが、残り2日間も出場し、千秋楽の本割で横綱・鶴竜を破って優勝決定戦まで持ち込んだものの、そこで敗れた。

 横綱審議委員会は昇進条件を「大関で2場所連続優勝、またはそれに準じる成績」と定めている。秋場所での照ノ富士の12勝3敗という成績を「優勝に準じる」と見るか否かだが、彼の師匠で審判部長でもある伊勢ケ浜親方は「準じる成績で間違いない」とし、北の湖理事長は「13勝と12勝では重みが違う」と否定的。何とも微妙な空気を残したまま、九州場所(初日=11月8日)を迎えた。

 他の競技なら「本格復帰はまだ」という時期だが、照ノ富士はほとんどぶっつけ本番で出場を決断した。

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