
フード&ワインジャーナリストの鹿取(かとり)みゆきさんが、日本ワインを紹介する。今回は、北海道蘭越町の「松原農園 ミュラー・トゥルガウ 2014(白)」。
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このところ、まずは自分でブドウを育ててから、ワイナリーを設立する人が増えている。けれども30年ほど前に、すでに同じ志を抱いた人がいた。北海道後志地方蘭越町でワイナリーを営む松原研二さんだ。
広島県で酒造メーカーにいた松原さんは27歳のときに、北海道で一本のワインに出会った。1986年のことだ。北海道ワインの「おたるミュラー」。豊かな果実の香りと涼やかな酸の心地よさに惚れ込んだ松原さんは、その年に家族で北海道に移住し、同社に転職した。そして7年後、蘭越で夢だった自分の畑を拓く。植えたのは出会いのワインと同じミュラー・トゥルガウだ。
19年間、委託醸造したワインの販売を経て昨秋、松原さんはワイナリーを設立した。北海道へ来てから28年が経っていた。
「ミュラー・トゥルガウのワインは、蘭越の地では、軽快な酸をもった、優しい味わいに仕上がります。いつのまにかボトルが1本空いてしまう。食卓のための買い求めやすいワインを目指しています」(松原さん)
(監修・文/鹿取みゆき)
※週刊朝日 2015年11月6日号