それはもう我々の人生にも何万回とあっただろう、翌日にはまったく覚えてないようなそんな女子のありふれた会話。
それを再現できるバカリズムの空恐ろしさを知ってたわ、「架空OL日記」で(バカリズムがバカリズムのまま24歳OLの日常を演じたドラマ。脚本も本人)。
3周目の人生で、麻美がミタコング先生(体育会系の暴力と文化系のネチっこさを兼ねそなえている)を救った時。
人生を繰り返したおかげでミタコングなりの家族愛も知った麻美だが、彼の話を聞きながら心の中でつぶやく一言。「元々嫌いな人の苦労話、まったく興味ない」
バッサリよ、助けたってバッサリよ。このバッサリ視点がまさにバカリズムで、このドラマが「徳を積んだいい話」だけでは全然終わらないだろうなとワクワクする。
そんな案内係が告げる次の来世はなんだろう。もしかして、麻美の「あ」で「アリクイ」、「さ」で「サバ」だとしたら、次は「み」で「ミジンコ?」。
なんて、どこもかしこも仕掛けなんじゃないかと何度も噛みしめちゃう。スルメドラマなのだ。
カトリーヌあやこ/漫画家&TVウォッチャー。「週刊ザテレビジョン」でイラストコラム「すちゃらかTV!」を連載中。著書にフィギュアスケートルポ漫画「フィギュアおばかさん」(新書館)など
※週刊朝日 2023年2月24日号