難しい言葉がたくさん書かれているが、「複数の作業ができない」「お金の計算ができない」「季節に合う服が選べない」「同じものを何度も買ってくる」の四つの因子が認知症に大きく影響しているという結果だった。それをできるだけ簡単に調べられるように項目を考えたという。

 しかし、この論文では四つの因子は「できる」か「できない」の2択で調べた結果から割り出したものである。それが「93.9%という感度(確率)」だった。「アプリにあるような4択だとだいぶ結果が違ってくるのではないですか」とぼく。高瀬さんは、

「ごもっとも。2階に何を捜しに来たのか忘れることは私も時々あるもんな」

 回答の欄のすぐ上に、昔からずっとできない場合は「ない」を押してくださいという文章は回答者を戸惑わせるのでは、と指摘すると、

「少し改善しないといけませんね。貴重な意見ありがとうございます。今後もアドバイスをお願いします」

 高瀬さんたちは2、3年前からこのアプリを作ろうとして研究を始めたそうだ。認知症の疑いがあるのに「怖いから病院に行きたくない」と拒否反応を示す高齢者が多いので、第三者の視点から簡単にできるアプリを開発して、ある程度まで感触をつかんだ上で、本人を説得、MRIやCTなどの精密検査をできる病院に行ってもらいたい、という思いからだった。

 この点については、ぼくも大賛成である。

 当初は15項目になるなど質問項目が多すぎたので、簡略化したそうだ。昨年末にはアプリも完成したが、論文の発表を待っていて8月になったそうだ。

 すでにダウンロード数は9月1日現在で7654と急増している。今のところ専門医の紹介は大田区在住者だけだが、目黒区や武蔵野市の医師会からも問い合わせが相次いでいる。いずれ全国の自治体に広げたいと高瀬さんは話している。

週刊朝日  2015年9月18日号より抜粋

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